2023年8月27日の『1789』千秋楽で宝塚を卒業した有沙瞳さん。
歌が得意で多くのヒロインを演じてきました。
トップ娘役就任も間違いなしと思われていましたが、ついにトップ娘役にはならずに宝塚歌劇団を退団しました。
なぜ有沙瞳さんがトップ娘役になれなかったのかを考えてみました。
有沙瞳さんのプロフィール
まずは有沙瞳さんのプロフィールや簡単な経歴をご紹介します。
三重県鈴鹿市・鈴鹿高校出身
98期生娘役
40人中19番入団
身長:160.5センチ
愛称:くらっち、みほ
特技:民謡、演歌
有沙瞳さんは三重県出身の娘役で、身長は宝塚の中ではやや小柄でした。
宝塚歌劇団に入団したときの成績はちょうど真ん中くらいです。
宝塚ではダンスの種目が多く、そのためダンスが得意な人のほうが試験成績が良い傾向にあります。ダンスより歌が得意な有沙さんにはやや不利かもしれません。
愛称の「くらっち」「みほ」はどちらも本名由来です。
特技の民謡と演歌はタカラジェンヌでは珍しいです。
2012年4月宙組公演『華やかなりし日々/クライマックス』で初舞台
2013年雪組に配属
2014年『一夢庵風流記 前田慶次』で新人公演初ヒロイン
2015年『銀二貫』でバウホール公演初ヒロイン
2016年12月26日、星組に組替え
2023年8月27日、宝塚歌劇団卒業
娘役スターへの必須条件の新人公演ヒロインは研究科3年目のとき。
翌年にはバウホール公演のヒロインを演じ、トップ娘役昇格の切符を手に入れます。
とても期待されている娘役だったことがわかります。
星組への組替えは同期の真彩希帆さん(元雪組トップ娘役)とのトレードでした。
星組にきた翌年の2017年11月には、伶美うららさん(元宙組・95期)のあとを受けて池田泉州銀行のキャンペーンガールに就任しています。
新人公演・小公演でのヒロイン歴
多くのヒロインを演じてきた有沙瞳さん。
雪組時代、星組時代を通じて、どのくらい演じてきたのかまとめてみました。
《雪組時代》 ・2014年6 - 8月、『一夢庵風流記 前田慶次』 - 新人公演:まつ(本役:愛加あゆ) 新人公演初ヒロイン ・2015年11月、『銀二貫』(バウホール) - 真帆/おてつ バウ初ヒロイン
《星組時代》 ・2017年3 - 6月、『THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)』 - 新人公演:マルグリット・サン・ジュスト(本役:綺咲愛里) 新人公演ヒロイン ・2017年7 - 8月、『阿弖流為-ATERUI-』(ドラマシティ・日本青年館) - 佳奈 東上初ヒロイン ・2018年2月、『ドクトル・ジバゴ』(ドラマシティ・TBS赤坂ACTシアター) - ラリーサ・ヒョードロヴナ・ギシャール(ラーラ) 東上ヒロイン ・2019年11 - 12月、『龍の宮(たつのみや)物語』(バウホール) - 玉姫 バウヒロイン ・2021年7月、『マノン』(バウホール・KAAT神奈川芸術劇場) - マノン 東上ヒロイン ・2023年3 - 4月、『Le Rouge et le Noir〜赤と黒〜』(ドラマシティ・日本青年館) - ルイーズ・ド・レナール 東上Wヒロイン
新人公演のヒロインは2回、バウホールなど小公演のヒロインはなんと6回も演じています。
有沙さんの実力がヒロインとして十分だった証ですね。
退団公演の『1789-バスティーユの恋人たち-』はマリー・アントワネットを演じています。
星組で上演された『1789』のヒロインは舞空瞳さん(102期)が演じているオランプですが、初演の月組ではトップ娘役だった愛希れいかさん(95期)がマリー・アントワネットを演じました。
つまり、ヒロインに匹敵するような大きな役で最後の花道を飾りました。
有沙瞳さんの得意分野
多くのヒロインや重要な役を演じてきた有沙瞳さん。
では、なぜ有沙さんは宝塚で重要な役を任されてきたのでしょうか。
歌が得意な歌姫
有沙瞳さんは歌姫として有名でした。
子どものころから民謡で鍛えてあり、また演歌も得意でした。
芝居でみせる演技力
有沙瞳さんは演技力にも定評がありました。
特に情念の強い役が似合い、純路線のヒロイン系から悪役に近いものまで幅広く演じてきました。
バウホール公演『龍の宮物語』では情の濃さとヒロイン性が活かされる有沙さんにぴったりな役でしたね。
池田泉州銀行のイメージガールとして
有沙瞳さんは池田泉州銀行(池銀)の11代目イメージガールでした。
2017年12月から2023年8月までの5年9ヶ月にわたり、池田泉州銀行の顔として活躍してきました。
池田泉州銀行のイメージガールとしてポスターに登場し、『歌劇』『宝塚グラフ』などに掲載されました。
阪急宝塚駅や劇場にもバナーが掲示されていたので、観劇のときに見たことがあるのではないでしょうか。
また、宝塚歌劇の池田泉州銀行の貸切公演であいさつすることもありました。
なぜ有沙瞳さんはトップ娘役になれなかったのか
多くのヒロインを演じ、実力もあった有沙瞳さん。
しかしご存じのとおり、トップ娘役に就任しないまま宝塚歌劇団を卒業しました。
特に池田泉州銀行のイメージガールになったときは宝塚ファンの多くが「トップ娘役最有力候補」と有沙さんをみなしただけに、意外な結末です。
なぜ有沙瞳さんが娘役の頂点・トップ娘役になれなかったのか、考えてみました。
運命の分かれ道?『伯爵令嬢』
研究科3年目、若手娘役時代に『伯爵令嬢』のアンナ役で評判をとりすぎたのが原因では?と言われています。
少女漫画を原作とした『伯爵令嬢』で、アンナはヒロインをいじめる悪役です。
若手娘役時代に狡猾な女スリであるアンナを印象付けてしまい、白くて清純なイメージから離れてしまったのではないでしょうか。
実際のところ、有沙瞳さんは「白い娘役」「純粋な少女」よりも色濃い役のほうが似合っていたと思います。
有沙さんは研究科7年目、新人公演最終学年のときに『霧深きエルベのほとり』でシュザンヌ・シュラック役を演じました。
シュザンヌはヒロイン・マルギットの妹で、礼真琴さん(95期・当時は星組2番手スター)演じるフロリアンを慕う清純な役ですが、残念ながらあまり評判にはなりませんでした。
歌声とソプラノ
有沙瞳さんは民謡で鍛えた歌唱力がウリの娘役です。
しかし、路線娘役らしいソプラノからは少し外れていたように思います。
学年が上がるにつれ経験を積んでソプラノも磨き上げましたが、娘役の勝負は早いです。
新公卒業後にトップ娘役になるのは稀なので、若手娘役時代に今の歌唱力があればよかったのかもしれません。
相手役とタイミング
「宝塚は男役の世界」「娘役は相手役次第」とよく言われます。
どんなに優れた娘役でも、トップ娘役に就任するにはタイミングが大事です。
娘役として旬の時期に、体格や芸風の合う男役がトップスターとして就任し、その相手役に選ばれなくてはなりません。
小柄で歌唱力の高い有沙瞳さんは、元雪組トップスターの望海風斗さん(89期)や、星組トップスターの礼真琴さんの相手役になると思われていました。
しかし望海風斗さんの相手役は真彩希帆さん(98期)、礼真琴さんの相手役は舞空瞳さんになりました。
宝塚の娘役は清純さが求められ、トップ娘役は男役トップスターより下級生がなります。
上級生になるとトップ娘役になる可能性はぐんと低くなります。
近年では花組のトップ娘役に仙名彩世さん(94期)が研9、月組のトップ娘役に海乃美月さん(97期)が研11、雪組のトップ娘役に朝月希和さん(96期)が研12で就任しました。
しかしこれらはやはり例外です。
これらの事情で、有沙瞳さんはトップ娘役の座を逃したのではないでしょうか。
しかし、宝塚の娘役として活躍し、舞台に貢献したことに間違いありません。