下がり続ける宝塚音楽学校の入試倍率に打つ手はあるか

音楽学校
この記事は約6分で読めます。

毎年ニュースになる宝塚音楽学校の合格発表。
2025年も3月30日に発表されました。

宝塚音楽学校の113期生は受験者数470名の中から選ばれた40名です。
受験できるのは中学卒業から高校卒業までの4年間なので、15歳から18歳までの女性です。

2000年以降の入試倍率やトップスター

2000年以降の宝塚音楽学校の受験者数や、輩出したトップスターたちをまとめました。

受験者数合格者数倍率男役トップ娘役トップ受験年度の出来事
20008810665020.1紅ゆずる/朝夏まなと桜乃彩音
2001899735019.5明日海りお/望海風斗夢咲ねね
2002909885019.76蒼乃夕妃/愛原実花
20039110205020.4愛加あゆ/野々すみ花
20049210665021.32鳳月杏/真風涼帆蘭乃はな
2005939845019.68彩風咲奈/芹香斗亜
2006949634720.48珠城りょう仙名彩世
2007958634519.18柚香光/月城かなと/朝美絢/礼真琴/桜木みなと愛希れいか/妃海風/実咲凜音
2008968544021.38花乃まりあ/咲妃みゆ/朝月希和/綺咲愛里
20099711064027.75永久輝せあ海乃美月三次試制導入、一次は面接のみ
20109810284025.7暁千星真彩希帆音楽学校裁判
2011999404023.5美園さくら東日本大震災
20121009244023.1華優希/星風まどか
20131018814022天紫珠李
201410210654026.7舞空瞳/潤花/春乃さくら宝塚歌劇100周年
201510310634026.6夢白あや
201610410794026.9
201710510424026.1星空美咲/詩ちづる
20181069654024.1
20191079154022.9
20201088524021.3新型コロナウイルス禍
20211096974017.4
20221106924017.3
20231116124015.3ハラスメント報道
20241124804012現役劇団員死亡事件
20251134704011.75

合格者数と倍率のうつりかわり

2000年代初頭は合格者数は50名、合格倍率は約20倍でした。
88期生のころです。

95期のときに合格者数を45名、96期以降は合格者数を40名と大きく減らしています。
このときは受験者数も1000人を大きく割り込んでいます。

この受験者減少を受けて、97期の受験から音楽学校は採用方針を変えます。
第1次試験を面接だけとし、スターの原石発掘に力を入れました。
その結果、受験者は1000名を超えました。
しかし97期生は中途退学や早期退団が多かったのも事実。厳しさについていけない人や、舞台を務めるレベルに達しない人が多かったのではないかと言われています。

97期受験のときに受験者数が回復しましたが、その後は96期生の裁判や東日本大震災の影響で受験者数は減少。

しかし、102期生のときに1000人を超える受験者数がいたのは、宝塚100周年を迎えての歌劇団の広報を強めていたためでしょう。

しかしその後はコロナ禍などを受けて、今では毎年受験者数の減少が報じられています。

受験者数減少の理由を考えてみる

ではなぜ宝塚音楽学校の受験者がこれほどまでに減ったのかを、私なりに考えてみました。

日本の人口減少

宝塚音楽学校の受験者数の減少の理由として、まずは日本の若者が減っていることが挙げられるでしょう。

統計局ホームページ/人口推計/人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐

上は、統計局ホームページの人口ピラミッドです。

2025年の宝塚音楽学校受験をできるのは、2006年(高卒・遅生まれ)から2010年(中卒・早生まれ)の女性です。
2006年(平成18年)生まれは1,092,674人、2010年(平成22年)生まれは1,071,305人です。

2000年ごろに音楽学校を受験した生徒は1982年から1985年ごろに生まれていますが、1982年(昭和57年)は1,515,392人、1985年(昭和60年)1,431,577人で、現在の受験年齢と比べて約1.5倍の赤ちゃんが生まれています。

toukei.pdf (統計表)

繰り返しになりますが、2000年に宝塚受験をした人たちは1982年から1985年ごろの生まれで、およそ年間150万人生まれていました。
その中から1066人が宝塚を受験し、50名が合格しています。

2025年に宝塚受験をした人たちは2006年から2010年ごろの生まれで、およそ年間108万人生まれています。
その中から470名が受験し、40名が合格しました。

出生数自体が3割ほど減っているので、受験者数が減ってしまうのは仕方ないことでしょう。
しかし、受験者数は2000年ごろの半分以下なので、受験者減少は人口減以外にも理由があると考えるべきでしょう。

新型コロナ禍と保護者の財力

皆さんご存じのとおり、芸事にはお金がかかります。
宝塚を受験するのに特別な資格は必要ありません。音楽学校も「技術は入学してから学べばいい」と言っています。
しかし、そうはいっても受験があり、バレエや歌の審査を受けるとなれば準備が必要です。
実力やノウハウのないまま受験して合格するのは至難の業でしょう。
もし合格できても、宝塚音楽学校の2年間で舞台に立つだけの技術を身につけるのは大変です。

どうしても、幼いころからバレエやダンスを習っていた人や、面接対策のためにいわゆる「受験スクール」に通ってノウハウを知っているほうが有利なのはいうまでもありません。

バレエや受験スクールに通う費用や、ときには整体でボディメンテナンスをしたり、歯の矯正をしたり、歌を習ったり……。
実力も美しさも、高みを求めればきりがありません。

どうしてもお金がかかる上に、2020年には新型コロナ禍が襲いました。
宝塚の受験者の保護者の中にも、コロナ禍で仕事が減り、子どもの夢への投資が難しくなった人も……。

芸能の多様化と表舞台への道の広さ

テレビ・映画などの芸能界が主だった昔に比べ、多くの「表舞台」への道が開かれています。

アイドルも多人数のグループが多く、地下アイドルも含めればかなりの数。
芸能事務所などに所属しなくても、SNSを通じて露出することが可能。
華やかな世界に出る道筋が、昔に比べて多くなりました。

そのため、あえて宝塚音楽学校を卒業し、宝塚歌劇団を経由するという形をとらなくてもいいと考える人もいるのではないでしょうか。

歌劇団の不祥事の影響

ここ数年、宙組娘役が亡くなった事件や、劇団内のいじめが週刊誌やテレビなどで報じられました。

宝塚歌劇団の華やかさの裏側はよどんでいると知り、宝塚への憧れを断ち切った人もいるでしょう。

また、保護者にしても、自分の大切な娘をそのような危ないところへ行かせるわけにはいかないと考えても当然です。

入試倍率を回復するには

上記のような理由で、宝塚音楽学校の受験者数の減少と、受験倍率の低下が起こったと考えられます。
では、どうしたら受験倍率は回復するのでしょうか。

一番手っ取り早いのは、合格者数を減らすことです。
受験年齢層の人口が減っているので、それに合わせて合格者数を減らせば、倍率は回復します。
仮に、2025年(113期生)の合格者数を30名に減らせば入試倍率は15.66倍に、20名に減らせば23.5倍になります。

しかし、それでは根本的な対処にならないでしょう。

なによりも大事なのは歌劇団のイメージ回復。
「歌劇団内ではハラスメント行為が行われている」などのブラックなイメージを払拭する必要があります。
宝塚歌劇団では、外部から専門家を入れたりして、ハラスメント対策に取り組んでいます。

すぐに効果がでることではないにせよ、地道に信頼を取り戻すことが受験者数増加へつながるのではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました